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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
 「……怒鳴って、すまなかった」
「ううん……」
やがて、辺りが葉や夏虫の声ばかりになった頃──静かに禊が呟いた。童はそれを何でもなく受け入れると、呆けたように言葉を続ける。
「でも俺……姉ちゃんがなんであの神様を怖がらなかったのか、ようやく分かった。俺、姉ちゃんよりずっと前からここにいるのにな。……きっと、信じてなかったんだ。信仰はしてた。でも信じてはいなかったような気がする……変だよな。だけど今は俺──」
「……それ以上は淡島の住人として、言わない方がいい。正しいことが都合の悪い時もある。──仕事に戻るぞ」
「あ……うん」
立ち上がり、いつもの──日常の夜に戻ろうとする兄貴分に童も倣う。きっと明日からまた忙しくなるのだろう。
 「……神依様、本当に今日は何があったんだろうな。とりあえず二日酔いにならなきゃいいけど。それにあの龍って何食べんだろ。酒は飲んでたけど──」
「……」
「正直分からないことだらけだけど、俺も頑張って一ノ兄を手伝う。姉ちゃん、守ってやんなきゃだろ」
「……ああ」
禊は「頼む」というように童の肩を一度叩き、歩き始める。
 頭は撫でてやれない。それでも童は笑って禊に従った。
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