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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
***

 一方、二人だけになった室内には異様な空気が充たされていた。篝火の薪が弾ける音さえやけに大きく聞こえる気がする。
 洞主は日嗣の真向かいに座し、足音が消え数分……人気がなくなったのを確認してから口を開いた。
「……何ゆえ、貴方様があのような物言いをなさるのですか」
「……あれが最も適任だと、判じたからだが?」
 対する男神の発する声、纏う空気は変わらず冷たく、無機質ではあったが──その存在感は凄まじかった。
 洞主となってからは、巫女を守るためにこうして数々の神と向かい合ってきた。こういう場面でなければ笑って軽口を叩ける神もいるというのに……やはり、目の前の男は違う。
「しかし奥社の巫女にも誇りがございます。新参の巫女を中心に据えては、不満も出ましょうて。ましてや此度は、見目麗しく高潔な、天孫たる貴方様が執り行う儀式。舞の者は勿論、楽も詞(ことば)も……携わる巫女達は皆、貴方様を想い常にも増して稽古に励んでいるというのに」
「お前達は心得違いをしている。御霊祭にてお前達が敬い従うべきは、私ではなくあの水霊だ。淡島の巫女達は、そのようなことも忘れたか」
「っ──巫女を……私達女を貶めたのは、貴方がた神々ではございませぬか!!」
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