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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
 余りに他人事のように宣う神に、洞主は抑えきれず身を乗り出し声を荒げるがそれでも──目の前の男は冷めた視線を返すのみ。
 それにどうにもならない無常を感じ、洞主は形ばかりの謝辞を述べると再び座り直した。
 そして男は、何の感傷も無いようにまた言葉を続ける。
「……それに関して、洞主たるお前に聞きたいことがある」
「……何なりと」
「巫女の名は、どの神が下している」
「……何故それをお聞きになるのです。申し上げることは私にはできませぬ。いかな神であろうとも、決して申せませぬ。高貴な貴方様には、端々の巫女の名などどうでもいいことではありませぬか」
「あの娘も、そうして何も語らなかった……」
「……っ!?」
不意にゆらりと男の影が揺れ、その手が洞主の眼前に伸びる。
 それを避ける間もなく、洞主は胸ぐらを掴まれ床に押し倒されていた。
 衝撃で簪が乱れ、中途半端にほどけた髪がもつれる。幾重にも重ねられた衣が崩れ、情事の跡のように床に広がる。
「何を──」
見上げれば、暗闇を照らす火の色を帯びた男神の黒髪が揺れ、その下の鋭い葉のような瞳が自分の無様に乱れた姿を映した。
 それはまるで夜這いにも似た──余りに甘美な恫喝だった。
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