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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
 頷くことも声を出すこともできない洞主に、神は手を緩めると一度衣を正し立ち上がる。
 「……ひ……つぎ、様」
その背を目で追えば神は振り返ることなく、ただ深い……青い炎が醸すような、静寂に音を与えた声で応(いら)えた。
「……間違えるな。あれは……まだ間に合う」
「……」
その声の火が消えるのと同時に、それ以上何をされるわけでも言われるわけでもなく足音が遠ざかっていく。
 「──玉衣様!!」
それに反するように、すぐに耳慣れた声と足音が近付き大きな手が自分を抱き起こしてくれた。おそらくずっと近くで控えていてくれたのだろう。
「……大事ない。すまぬな、大兄」
「いえ……しかし」
「……構わぬ。あのご気性と猛々しさはやはり、月日の神の血族のものよな……いや、もう一柱荒ぶる男神がおられたか。久しく忘れておった」
洞主は中途半端に残る簪を抜き、手櫛で髪を整える。その簪を、宝物を扱うように一本一本大兄が受け取り、忍ばせていた布に包んでいく。
 戒めを解かれた髪は軽やかに、だがその反面心はひたすらに重いまま──。
 「……大兄。私は舞巫女達に、何を申せば赦してもらえるだろう」
「それは……」
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