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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
「想うことすらあの神は許して下さらない。私はそれを自らの口で申し伝え、その憤りが穢れとなって神依に向かうのを鎮めねばならぬ。……どうすればいい?」
 明確な返事を期待していたわけでもないが、大兄もまた神妙そうな顔をして口を開いた。
「……お言葉ですが、考えあぐねている時間もさほど無いかと……。大弟が度々奥社の神事を覗かせておりましたが、おそらく仮世での生も含め、自らが芸事に携わるのは初めてでしょう。となれば一どころか零から所作を仕込まねばなりませぬ。日があるとはいえども、余裕があるわけでもありません。何か一差し──すぐにでも舞巫女らに混ぜて稽古を始めませんと形にすらならぬかと」
「……で、あろうな」
その禊の言葉に洞主は頷き、立ち上がる。大兄もまた黙してそれに従った。
「……何かお召し上がりになりますか。甘いものでもご用意致しましょう」
「……頼む。明日からは忙しくなりましょうて……今日一晩くらいは、ゆるりと過ごすことにしよう」
「はい」
洞主は乱された衣を整え、目を伏せる。
 男神に身を重ねられたのはいつ以来だろう。
 そう思えば、先程の恫喝は──恐ろしくも、歯がゆくも思えた。
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