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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
 所々に磨かれた石で出来た卓や椅子があり、きっと皆こういう場所でお喋りをしていたのだろうと思う。
 そしてその周囲は木も茂みも花も、あらゆる季節のあらゆる植物が形を成し宵の薄藍に佇んでおり、それら全てを一望出来るような豪勢な朱の楼閣が──ひと際高く、天に突き抜けていた。
「進貢の広場です」
「しんこう?」
「はい。巫女や覡は毎朝日の出と共にこちらに訪れ、自身が想う神のために草花を摘みあの中央の社に捧げます」
「前に言ったろ、信仰は神様の力を強くするって。愛情や、親愛でもいい。花はそれこそ“依”の力があるんだ。だから花にそれを託して、神様にお届けするんだよ。すげえのは毎日花束抱えて並ぶ巫女さん。よくやる……じゃなくて、大変だよなー」
「そっか、一人じゃなくていいんだ。じゃあ私は日嗣様と猿彦さん、それからこの子達だね」
神依はもう定位置になっている腕の子龍を見遣る。神に捧げるというなら……あの、可哀想な水霊にも。
 何か可愛い花がついた水草がいい、と思って足元を流れる川に目を遣れば、その水面に白金の光が揺らいでいた。
 月。
 それを眺めていると不意にどこかから、微かな笛の音が聞こえてくる。
「……?」
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