この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
神依はもちろん、言葉を交わす必要も無く禊と童の視線もある一点に向かう。それは──あの天を貫く朱の楼閣。
「頂上が……雲で見えない」
「……あの高楼には高天原の神々がまします。巫女や覡の暮らしや祭祀を見聞し、自らの臣や妹背……妻や夫をお探しになるのです」
「そう……」
ならば今も誰かが居るのだろうか。
自分達も見られていたのかもしれないと思うと何とも居心地が悪くて、神依は「行こう」と禊に声を掛けると、新しい住まいへと改めて足を向けた。
***
そうして禊に案内された家は、淡島の片隅にある小さな浮島の家だった。
やはり跳び石で繋がれており、その小島に行くにはそれを渡るしかない。
「夜ですので足元にお気をつけ下さい。今夜は豊葦原が雨のようで、雲海も雲に覆われ星明かりがありませんから」
「そうなんだ。上も下も星の海って、ちょっと楽しみにしてたのにな」
神依は緋色の海で猿彦の背を追ったことを思い出しながら禊の背を追う。
(そういえば……)
あの時、疲れていたのか少しぼうっとしてしまって、日嗣に不審がられてしまったことがあった。別に責められた訳ではないが、その目は明らかに何か物言いたげで、なのに口は真一文字に結ばれていた。
「頂上が……雲で見えない」
「……あの高楼には高天原の神々がまします。巫女や覡の暮らしや祭祀を見聞し、自らの臣や妹背……妻や夫をお探しになるのです」
「そう……」
ならば今も誰かが居るのだろうか。
自分達も見られていたのかもしれないと思うと何とも居心地が悪くて、神依は「行こう」と禊に声を掛けると、新しい住まいへと改めて足を向けた。
***
そうして禊に案内された家は、淡島の片隅にある小さな浮島の家だった。
やはり跳び石で繋がれており、その小島に行くにはそれを渡るしかない。
「夜ですので足元にお気をつけ下さい。今夜は豊葦原が雨のようで、雲海も雲に覆われ星明かりがありませんから」
「そうなんだ。上も下も星の海って、ちょっと楽しみにしてたのにな」
神依は緋色の海で猿彦の背を追ったことを思い出しながら禊の背を追う。
(そういえば……)
あの時、疲れていたのか少しぼうっとしてしまって、日嗣に不審がられてしまったことがあった。別に責められた訳ではないが、その目は明らかに何か物言いたげで、なのに口は真一文字に結ばれていた。