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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
息を呑んで見守っていると、その隙間から出てきたのは……二匹の白い鼠。
 一匹は長い髭をたくわえ、尾に自分の腹ほどの透明の珠を結わえている。そしてもう一匹はつやつやの毛並みの、すらりとした鼠だった。
 親子だろうか。髭の鼠は若い鼠に手を借り珠を抱き寄せると、大儀そうに姿勢を正し──神依を見上げて、柔らかく目を細めた。
 「──ほう、此度は巫女であったか。よくぞ参った」
「……禊、ねずみが喋ったよ」
「神依様……」
呆けたように呟く神依に、禊が呆れたような溜め息を返す。しかし鼠は好好爺然とした口調で続けた。
「よいよい。家というのはな、母や娘、おなごが爛漫な方が栄えるのじゃ。
──儂は鼠軼(そてつ)と申す。そちが言う通り正しく鼠。しかしほれ、その腕に巻き付く蟒蛇(うわばみ)程度には怖じぬ逸材であるぞ。逸は軼、鼠軼じゃ。そしてこれが一番上の息子で鼠英(そばな)と言う。
儂は今より五百年ほど前の覡に祭られこの家の守り神とされた。家も家主も数回変わり、息子もまだまだ未熟なれどその神威を継いでおる」
「五百年……すごい」
ピキュッとおかしな声を上げてたじろぐ子龍に神依は微笑み、また鼠英が礼儀正しく頭を下げるので神依自身も改めて姿勢を正してそれに返した。
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