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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
【4】

 高天原は天に浮かぶ社が複雑に絡み合う、空と霧と木の世界だった。
 空に晒された舞台から下を覗いても、そこには縦横に組まれた柱が見えるばかりで後は雲と霧とに覆われている。豊葦原と道俣淡島がそうであるように、次元が少しずれているのだ。
 社は古式に則り清廉された佇まいで無駄がない。どこを見ても整然として、美しいというなら美しいし味気ないといえば味気ない。
 その中でも朱色に塗られた楼閣だけが常に淡島に繋がり、酔狂な神々はよくそこから巫女達の生活を眺めていた。
 その楼閣こそ、進貢の広場に聳えるあの朱の楼閣。
 巫女が献花を摘むのを見、お喋りを聞き、祭祀を眺めては“妻問い”の……一夜の逢瀬の相手を見付ける。
 次元は違えど、見えるよう顔を出してやれば相手もこちらを認識できるようになるから、たまにそうして娘達の嬌声を聞くのも一興だった。
 永遠にも近い日々を日の出と日の入りに従い過ごす苦痛は既に膿み、享楽にも近い惰性となってその一時の刺激を求める。新しく流れ着いた水蛭子は、そんな神々の恰好の獲物だった。
 ──反面、心から恋を求める男神も稀にいる。妻達の感情はともかく多妻が許される世。その実が結ぶまで、誠実に巫女の元へ通い続ける。
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