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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
「──伍名(いつな)よ。何故その話を私に持って参った?」
「それは……貴方様が傍観者であるが故に。誰にも関わらないからこそ、万事に最も善き方法が見付けられる」
「私の気性を知ってか? ならばその方法の中身も問わぬな?」
「……」
「好きにせよ……私も好きにする。元よりその苗──日嗣という苗はお前たち国津神のものでもある。せいぜい日照りにならぬよう、神の字抱く大層な水田も潤してやればいい。水が張られれば、月も自然と水面に映ろう」
伍名と呼ばれた神は、その言葉に了承するように頭を垂れる。
 言葉には言霊が宿る。それ故に神と神が言葉を交わすにはどうしても象徴的抽象的な物言いになってしまうが……充分だった。
 そしてそれを見た銀の神はまた興味が失せたように月を臨んで、酒を煽る。
 月──。
 銀の神は、月そのままだった。満ち欠けをするように気まぐれで、闇を照らすように未来を見通す。そして、夜に輝く太陽は無けれど昼に浮かぶ月があるように──太陽に憚らず、共に天に存在出来る剛毅さも持ち合わせている。
 また彼は神々には珍しく、特定の妻を持たない男神でもあった。故か、淡島には酔ったようにふらりと現れては……巫女を、抱いたり抱かなかったり。
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