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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
そんな世界が本当にあるのだろうかと垣根に座る鼠軼をまじまじと見れば、鼠軼は長い髭をさすりながら笑って答えてくれる。
「高天原には常世から訪れた神が真におるのじゃぞ。そも、神々が水蛭子を受け入れるようになったのも、海の向こうで祭られて、偉大な福神となって戻ってきた子がおったからじゃ。子を流す親の心痛は儂には分からぬが、より良い世界へと願って流す親もおったかもしれんのう」
「……鼠軼様は、鼠英様以外にもお子さんが?」
「おるおる。言うても儂も鼠、子は百を超えてからは数えとらんがな。しかし妻御と子供の名くらいは覚えておるから、数えるには一度書き出してみねばのう」
(……紙、どのくらい要るかな?)
「神依様ー、ご飯だよー」
「あ、はーい」
そうして神依の一日は始まり、しかし奥社を降ってから最も変わったのは童だったと思う。
神依の朝餉が済むまでは一緒だが、その後片付けが終われば仕事に行ってしまう。昼過ぎには戻るのだが、「今日はどこへ行ったの?」と問えば行き先も様々だった。
それでも本人が得意だと言う通り、最も声が掛かるのは巫女や覡の装飾品を取り扱う玉造府のようで、これが意外なことに、子龍に取って最も重要な事案となった。
「高天原には常世から訪れた神が真におるのじゃぞ。そも、神々が水蛭子を受け入れるようになったのも、海の向こうで祭られて、偉大な福神となって戻ってきた子がおったからじゃ。子を流す親の心痛は儂には分からぬが、より良い世界へと願って流す親もおったかもしれんのう」
「……鼠軼様は、鼠英様以外にもお子さんが?」
「おるおる。言うても儂も鼠、子は百を超えてからは数えとらんがな。しかし妻御と子供の名くらいは覚えておるから、数えるには一度書き出してみねばのう」
(……紙、どのくらい要るかな?)
「神依様ー、ご飯だよー」
「あ、はーい」
そうして神依の一日は始まり、しかし奥社を降ってから最も変わったのは童だったと思う。
神依の朝餉が済むまでは一緒だが、その後片付けが終われば仕事に行ってしまう。昼過ぎには戻るのだが、「今日はどこへ行ったの?」と問えば行き先も様々だった。
それでも本人が得意だと言う通り、最も声が掛かるのは巫女や覡の装飾品を取り扱う玉造府のようで、これが意外なことに、子龍に取って最も重要な事案となった。