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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
「貴女が気になさるようなことではありません」
「でも……でもこの子、果物やお菓子を本当に大事そうに食べるんだもん……。何もしてない私が毎日お膳で沢山のおかずを食べさせてもらったりお菓子を貰ってるのに、働いてる童が貰えないなんて……変じゃない?」
「……一ノ弟」
「ちょっ、俺なにも言ってない! てか俺はちゃんとダメって言ったし!」
──とそんなやり取りを数回めげずに繰り返し、最終的には鼠軼の助けも得て、「せめて夕餉だけはみんな一緒に同じものを摂ろう」と禊を説き伏せた神依は納屋を漁り、埃をかぶった飯台を自ら引っ張り出してきた。
 それは淡島では他に無い光景。
 そして食材を余分に調達するにも禊はいちいちその役の者に、良き主で幸いなりと祝い言葉を述べられた。
 そんなふうに、神依を快く思うのは実は神事に関わらない──淡島では地位を持たない者の方が多かった。玉造の匠も然り、だが変わった巫女がいるとその話が人の口に上れば、あちこち働きに出ている童達を通して結局は他の巫女達にも伝わってしまう。
 日嗣から直接取り立てられたことを除いても、神依は自分の何がそんなに悪いのか分からないまま、淡島の巫女達の中でも少しずつ孤立していくようになっていた。
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