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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
 箱庭のようなこのムラ社会では、人と違うことをするのはあまり良く思われない。たとえそれが善いことなのだとしても、正しいことなのだとしても。
 それでも神依は禊や童、鼠軼達に支えられて、洞主の言った通り日々の生活だけは心安らぐ場所として皆で共に過ごしていた。


【2】

 だが更に一週間ほど経つと、その神依自身の様子が変わってきてしまった。
「ご馳走さま」
「──神依様」
「もういい、寝るまで練習したいの。でなきゃまた怒られちゃう。あ、童、この煮物好きでしょ? いっぱい食べて」
「姉ちゃ……神依様」
夕餉は三人で食べようと、反対する禊を必死で説き伏せていたはずの神依自身がいつもの半分程度しか箸を付けず、早々に自室に引き込もってしまう。
 何をしているのかと思えば、ただひたすらに舞の稽古。手本を見ながら細かい動きを覚え、たまに禊を呼んでは全体の動きを見てもらったりして、とにかく本当に宣言通り寝るまで体を動かしていた。
 「一ノ兄、何とかしてやってよ。俺、飯も美味そうに食べない神依様なんて嫌だよ」
童もまた食欲が失せたように溜め息を吐き箸を置く。少し前は、世の中にこんな美味いものがあったのかと一日の楽しみにしていたのに。
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