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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
ぴしゃりと八つ当たりのように閉められた障子とそれに映る影が目元を拭うのを見て、向けられる悪意の質が変わったことが禊にも分かった。
──……禊。私、……やっぱり変?
禊の脳裏に甦る、いつかの主の幼い問い。
そう──淡島に長く住み、多くの巫女を見てきた禊に取っては、いつかの神依が抱いた感情など本当に些細な、可愛いものだったのだ。
そうして朝も、ぎりぎりまで家を出たがらなくなった。稽古が負担になり始めているのは確実だった。
***
「……じゃあ、行ってきます。その子、お願いね」
「はい。またいつもの時間にお迎えに上がりますので」
「うん。……」
一瞬すがるような視線を向けられ、しかし何も言わず稽古場となる神楽殿に向かう主に、禊もまた何も言わず頭を下げる。
「……」
キュウ、と禊の頭の上で切ない声を上げる子龍に笑って手を振り、社殿に入っていく神依。
稽古は毎日、午(ひる)前から夕方まで。神楽殿の様子は禊には分からない。分からないが──元々、歓迎されないのは百も承知だった。
年中神事を重ねる奥社では、実はもうほとんど役回りが決まっている。舞も楽も神詞も、それぞれに携わる巫女が既にいるのだ。
──……禊。私、……やっぱり変?
禊の脳裏に甦る、いつかの主の幼い問い。
そう──淡島に長く住み、多くの巫女を見てきた禊に取っては、いつかの神依が抱いた感情など本当に些細な、可愛いものだったのだ。
そうして朝も、ぎりぎりまで家を出たがらなくなった。稽古が負担になり始めているのは確実だった。
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「……じゃあ、行ってきます。その子、お願いね」
「はい。またいつもの時間にお迎えに上がりますので」
「うん。……」
一瞬すがるような視線を向けられ、しかし何も言わず稽古場となる神楽殿に向かう主に、禊もまた何も言わず頭を下げる。
「……」
キュウ、と禊の頭の上で切ない声を上げる子龍に笑って手を振り、社殿に入っていく神依。
稽古は毎日、午(ひる)前から夕方まで。神楽殿の様子は禊には分からない。分からないが──元々、歓迎されないのは百も承知だった。
年中神事を重ねる奥社では、実はもうほとんど役回りが決まっている。舞も楽も神詞も、それぞれに携わる巫女が既にいるのだ。