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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
 つまり彼女は、自分達が巫女として積み上げてきたものも、女として求めてきたものも……そのどちらもを、何の苦辛も無く易々と手にした異質な巫女。
 そしてその巫女は間違いなく、他の巫女達が憎むに相応しい存在でもあった。
 それでも禊は禊として、主を守るべく洞主にも現状を伝えてはみたが、
「すまぬ、すまぬな禊。今回ばかりは許してたも。私もそれとなく言ってはみたが、ならなかった。自分達が苦労して得たものを、よりによって御令孫の一言で神依が手に入れた、それはもちろん神依の責ではない。しかし私がそう申せば、今度は何故あればかり庇うのか、贔屓するのかと……結局は、余計に神依に怨嗟が向かってしまう」
心配りだけはするから許して欲しいと床に額を付けて頭を下げられ、そこまでされてしまってはもう禊にできることは無かった。
 「……」
帰り道、雲海の向こうで濃い灰色の雲がわき上がってきているのが目に入る。
(……雨が降る)
季節も少し、変わろうとしていた。
 家に戻った禊は衣を室内に取り込み日々の仕事を仕上げると、取り分け丁寧に神棚を磨きその前に座して頭を垂れる。
 そして主にその怨嗟が依り憑かぬよう、二柱の神を想い、祈り、祓詞(はらえことば)を捧げる。
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