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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
 その最後だけ……ころころと愉しげに語られた言葉に、春風のようにふわっと上がる女達の嬌声。それに日嗣は眉を寄せ、御簾を不機嫌そうに見つめた。そして相手をするのも下らない、といった風に立ち上がる。
「そのような話でお召しに預かったのならば私が申すことはありません。これにて──」
「馬鹿者」
そして踵を返したところをムッとしたような声音で呼び止められて、日嗣は肩越しに御簾を見遣った。
「わらわが嫌がらせのためだけにお前を呼ぶ訳がなかろう、月読と一緒にするな。──その月の君から、御霊祭は進貢の広場で催せとお前に達しじゃ」
「……あの大叔父上が?」
「おそらく何か視えたのであろう。幸いあそこには水場もある。龍というには頼りなき、儚き蛟の魂(たま)なれど──龍は神にも人にも属さぬもの。蛟と侮り、千年後に大蛇と成ってはわらわも敵わぬ。今回は月読も人を介さず自らそれを申し伝えてきた。加えてわらわの口からこれを申せば、それが何を意味するか──判るな?」
「……月日の運行に逆らう者はおりますまい。御意のままに──せいぜい件の巫女共々、良き見せ物にならせて頂きます」
「それこそうつけの物言いよ。可愛い孫の、久方ぶりのハレ舞台──わらわは純粋に、楽しみなのじゃ」
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