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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
空と白い靄とが見えるだけの世界。しかし猿彦の目には少しだけそれが異なって見える。八衢は、今日は小雨が降っていた。
「……神依、毎日頑張ってるみてーだからな。芸事の加護ならうちのかみさんが一番良い。きっと御霊祭までには、上手くなる」
「……」
日嗣は特に何を言うでもなく、同じように白い景色をぼうっと眺めた。
巫女としての祈りは毎日、毎日届いている。巫女が行う進貢は神々の魂の糧となるから、日嗣達にはそれが伝わる。何を選び捧げているかまでは知れないが、おそらく自らの魂と、依となる花との相性が良かったのだろう。はっきりと──あの娘だと、分かる。
ただ一日一日が経つに連れ、それは捧げられる祈りから求められる救いへと変わっていくようだった。それには多分、神依自身を依とした従者達の想いも混ざっている。
そもそもあのような下世話な噂が祖母にまで届くこと自体が少し異様なのだ。それは膨れ上がった悪意の大きさを示している。
きっと少女達は、噂では済まない、もっと鋭い……見えない刃に晒されて、やはり見えない心を削ぎ落とされているのだろう。そして神も同じように、祈りを、救いを受け取ることはできても、その加護を目に見える形で人に見せることはできない。
「……神依、毎日頑張ってるみてーだからな。芸事の加護ならうちのかみさんが一番良い。きっと御霊祭までには、上手くなる」
「……」
日嗣は特に何を言うでもなく、同じように白い景色をぼうっと眺めた。
巫女としての祈りは毎日、毎日届いている。巫女が行う進貢は神々の魂の糧となるから、日嗣達にはそれが伝わる。何を選び捧げているかまでは知れないが、おそらく自らの魂と、依となる花との相性が良かったのだろう。はっきりと──あの娘だと、分かる。
ただ一日一日が経つに連れ、それは捧げられる祈りから求められる救いへと変わっていくようだった。それには多分、神依自身を依とした従者達の想いも混ざっている。
そもそもあのような下世話な噂が祖母にまで届くこと自体が少し異様なのだ。それは膨れ上がった悪意の大きさを示している。
きっと少女達は、噂では済まない、もっと鋭い……見えない刃に晒されて、やはり見えない心を削ぎ落とされているのだろう。そして神も同じように、祈りを、救いを受け取ることはできても、その加護を目に見える形で人に見せることはできない。