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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
その猿彦の言い様に、日嗣は自らが洞主に述べた言葉を思い出し自嘲気味に呟く。
「……お前は本当に、いっそ清々しいほど俺に対して遠慮が無いな」
「いいだろ。良いとこの坊っちゃんには、一人くらいそういう奴がいないとな」
「ああ……そうだな。お前は確かに、道の神だ。いつも助かる」
「……」
そう言う友の顔は久しぶりに見る、子供のような何の屈託も無い穏やかな顔になっていて、猿彦は小首を傾げて無言のまま「どうした?」と問うてみせた。
「──明日、淡島に降りようと思う。実は婆様から、御霊祭は進貢の広場でせよと命じられてな」
「そらまた……男神にも女神にも喜ばれそうな、良い見せ物だな」
「だろう。それは気が乗らぬが……色々あってな。致し方ない。だから明日、少し様子見に行ってくる」
「……それで?」
「……俺は神故に、人が人を救う術を知らない。だからもし──それを示してくれるような者と会うたなら、もう一度あの娘を……すくい取ってやりたいと思う。今度は海ではなく、淀の中から。縁あらば、きっと何者かが俺にそれを唆してくれるだろう。俺はそれをもって、あの娘が神たる俺に取って何になるのか……少し、考えてみようと思う」
「……孫」
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