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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
 舞が下手だの才能が無いだの物覚えが悪いだの、直接的に言われていた方がまだ気楽だった。怒る元気も出てくるし、事実その通りだったのだから仕方ない。
 ただ三週間が経ち、舞が形になってくると今度は別の所に別の悪意が向けられるようになった。それは先のように神依自身のこともあるし、洞主や猿彦のこともあるし……禊や童のこともある。
 特に童が心配だったが、家ではそんな素振り微塵も見せない。毎日神依を元気付けようと明るく振る舞い、一日の出来事を一生懸命語ってくれたり、心無い中傷から食を細らせた神依のために甘い野菜を持ち込み、禊に食卓に上らせるよう頼んでくれているのも見た。また鼠軼や鼠英も夕餉の席に共に並ぶようになって、酔っ払うまで酒を飲んでは場を賑やかし、騒いでみせてくれる。だから、神依は何とかここまで来れた。
 「……おはようございます」
神楽殿に入ると、神依以外の皆は既に集まって何やらひそひそと話をしていた。時折甲高い歓声が上がって、神依が一応の礼儀として返ってこない挨拶をすれば、それを機に悪意のある眼差しと笑い声が一斉に向かってくる。
 もう気にしないようにして、そのままいつもの場所に荷物を下ろして準備を始める。
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