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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
──頑張って良かった。
その細やかな優しさが、今の神依の身と心には必要だった。洞主の言葉は確かに、巫女達へのものであり神依へのものでもあった。巫女達もその時ばかりは何の思惑も無いように笑みを交え、各々の技を讃え合っていた。
そして稽古終わり、新参の役目として神楽殿の掃除を請け負っている神依が道具を取りに社殿の裏手に回ったところへ、洞主の名代として大兄が来てくれた。
「俺ですまんな……。他の巫女の目もあって、玉衣様はなかなかな」
「いえ──嬉しいです。ありがとうございます」
大兄を見上げれば、大兄は湿気に広がる髪を気まずそうにかく。目の前の娘は、笑っているのに泣きそうに見えて……大兄の、もうずっと昔に抱いた主への淡い恋心をくすぐった。洞主も昔は、こんな顔をすることがあった。
「……よくここまで、耐えられた。技術は他の巫女に敵わずとも、その御心は他の巫女に追随を許さぬものであったと、俺も一介の禊として思う」
「大兄さん……でもそれは、禊や童がいてくれたから。一人ではきっと、無理だったと思います」
「そうか……。しかし本番では、御令孫の御前に立てるのはただ一人だ。今更こんなことを言うのは……悪戯に心を惑わすだけかもしれんが」
「……?」
その細やかな優しさが、今の神依の身と心には必要だった。洞主の言葉は確かに、巫女達へのものであり神依へのものでもあった。巫女達もその時ばかりは何の思惑も無いように笑みを交え、各々の技を讃え合っていた。
そして稽古終わり、新参の役目として神楽殿の掃除を請け負っている神依が道具を取りに社殿の裏手に回ったところへ、洞主の名代として大兄が来てくれた。
「俺ですまんな……。他の巫女の目もあって、玉衣様はなかなかな」
「いえ──嬉しいです。ありがとうございます」
大兄を見上げれば、大兄は湿気に広がる髪を気まずそうにかく。目の前の娘は、笑っているのに泣きそうに見えて……大兄の、もうずっと昔に抱いた主への淡い恋心をくすぐった。洞主も昔は、こんな顔をすることがあった。
「……よくここまで、耐えられた。技術は他の巫女に敵わずとも、その御心は他の巫女に追随を許さぬものであったと、俺も一介の禊として思う」
「大兄さん……でもそれは、禊や童がいてくれたから。一人ではきっと、無理だったと思います」
「そうか……。しかし本番では、御令孫の御前に立てるのはただ一人だ。今更こんなことを言うのは……悪戯に心を惑わすだけかもしれんが」
「……?」