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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
「……!」
鏡の前までくれば、そこに映った自分の顔が一瞬別の女性──巫女の後ろ姿に変わる。
 像を結び、幻想を、あるいは現を顕す鏡。それで確信を得た神依は、神棚や祠にするように静かに手を打った。
 御前にて、口を利いていいか……まずは神に問い、頭を垂れる。よければその姿を隠さず、ここに……と顔を上げれば、蜘蛛はまるで頷くようにゆらりとその身を揺らした。
 「……端神か。よく気付いたな」
「──わあっ!?」
そこへ誰もいないはずの背後から話し掛けられて、神依は弾かれたように振り向いた。
 見られていた、とばくばくする心臓を押さえ慌てて相手を確認すれば、相手も驚いたように一瞬身を引き──すぐに不機嫌そうに眉を寄せると、口を開く。
「……大声を出すな。他の巫女に見付かると面倒だ」
「あ……。ご……ごめんなさい……!」
「……それからお前はその、俺の顔を見るなり謝る癖を何とかしろ」
「ごめんなさ……あ」
「……もういい」
「~~っ」
それ以上言うなと言わんばかりに、頭を下げようとする神依の額を押し留める大きな手。
 予想だにしなかった人物の来訪──。
 おそるおそる顔を上げた神依の前に在ったのは……口々に「向き合うには相応しくない」と比べられてきたはずの、天孫……日嗣だった。
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