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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
 人目を気にし、それでも努めて明るく振る舞おうとする少女は可哀想だった。いっそ思いっきり泣かせてやりたかったが、それをすればきっと少女のなしてきた全てのことが無駄になってしまう。
 結局自分にできることは、大兄に言われた通り……禊として、今にも崩れそうな主の足元に這いつくばって、崩落をやり過ごせるよう砂ほどのものをかき集めることだけだった。
 「……?」
そのまま広場を横切るように進んでいくと、靄の中に人影が佇んでいるのが見えた。
 それはこの雨の中、傘もささず、顔を伏せるようにして広場の端にある池を眺めている。
 しかし近付けば、それに傘など要らない理由が分かった。雨粒は自らその男を避け、男の高潔さ、清麗さを守っている。
 肩の上で子龍が鳴く。
 その声に、男はこちらに気付いたように振り向き……まるで、何か天啓を受けたかのようにああ、と一度深い息を吐き出すと、ただ一言呟いた。
「……お前か」
「……御令孫……」
二人は互いに、鏡映しのように自分に無いものを相手の中に見付けて、目を反らした。
 同じく互いに、求めていたもののはずなのに……どうしてだか、心は複雑だった。

***
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