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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
「ひ……日嗣様がどうしてここに?」
やや落ち着きを取り戻した神依は、それでもまだ早鐘を打つ胸元を抑えながら日嗣と向き合う。
するとその肩からひょこっと見慣れた子龍が嬉しそうに顔を出して、神依の胸に飛び込んできた。
「あれっ? この子」
「もう知っているかもしれないが……急遽、御霊祭が進貢の広場で行われることになってな。そこで蛟を祭る池を見ていたら、お前の禊と会って……少し話をした。ついでに預り物だ」
「……」
日嗣の視線を追えば、その先の出入口には一本の傘が立て掛けられていた。きっと迎えに来てくれる途中だったのだろうと、神依は肩の力を抜く。
「……禊と何を話したんですか?」
「それより──」
まるでその話を断ち切るように、日嗣は神依の隣に立ち何の躊躇も無く蜘蛛に手を差し出す。すると蜘蛛はゆったりとその手に乗り、また神依を見上げた。
「……女郎蜘蛛は水神としてのたちを持っている。女の姿声を持ち谷川に潜む話もあるし、その糸を繰る姿と相まって巫女に通ずる生き物であるともされている。奥社にも神に献上する布を織る巫女達がいるが、その部屋にも水路が通っているはずだ」
「あっ……それ、禊に見せてもらったことがあります。確か……たな? というんですよね」
「……ああ」
やや落ち着きを取り戻した神依は、それでもまだ早鐘を打つ胸元を抑えながら日嗣と向き合う。
するとその肩からひょこっと見慣れた子龍が嬉しそうに顔を出して、神依の胸に飛び込んできた。
「あれっ? この子」
「もう知っているかもしれないが……急遽、御霊祭が進貢の広場で行われることになってな。そこで蛟を祭る池を見ていたら、お前の禊と会って……少し話をした。ついでに預り物だ」
「……」
日嗣の視線を追えば、その先の出入口には一本の傘が立て掛けられていた。きっと迎えに来てくれる途中だったのだろうと、神依は肩の力を抜く。
「……禊と何を話したんですか?」
「それより──」
まるでその話を断ち切るように、日嗣は神依の隣に立ち何の躊躇も無く蜘蛛に手を差し出す。すると蜘蛛はゆったりとその手に乗り、また神依を見上げた。
「……女郎蜘蛛は水神としてのたちを持っている。女の姿声を持ち谷川に潜む話もあるし、その糸を繰る姿と相まって巫女に通ずる生き物であるともされている。奥社にも神に献上する布を織る巫女達がいるが、その部屋にも水路が通っているはずだ」
「あっ……それ、禊に見せてもらったことがあります。確か……たな? というんですよね」
「……ああ」