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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
 言ってから、神依はそれがどんなものだったか思い出して少し目を伏せる。
 それに日嗣も微かに笑み、大丈夫だと言うように目で諭し蜘蛛の乗った手を差し出してきた。
「……雨気が濃くなって姿を現したのだろう。……お前を心配している」
「……え?」
日嗣の言葉に、蜘蛛はまるで手招きするようにその細い足を動かす。神依がおずおずと手を差し出せば、蜘蛛は今度はそちらにゆっくりと移った。細い糸が一本、日嗣と神依の指を結ぶ。
 (……巫女の性質。あの鏡に映った後ろ姿……もしかして)
……もしかして、この蜘蛛は自分と同じような目に遭った巫女だったのではないだろうか。
 神がどうやって生まれるかは分からないが、元は人だったものもあるだろう。水神のたちを持っているというなら、或いは……。
 それを思えば自然と目頭が熱くなってくる。
 神楽殿に入れば、もうずっと一人だと思っていた。でもそうではなかった。
「もしかしてずっと見ててくれたのかな……。大丈夫──あともうちょっとだから。私……頑張るから。……ありがとう」
「……」
神依の言葉に、日嗣もまたわずかにその表情を変える。
 蜘蛛は何か考えていたようだが、少しすると自分の意を伝えようと日嗣の方に向き直った。
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