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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
 「……お前によく似た娘を知っている」
「……え?」
「いや。それより──舞は覚えたのか」
日嗣は何かを言いかけ、しかし神依に応えるように何も知らない振りをして問えば、神依は嬉しそうに笑みを深め頷いた。
「……はい。まだ形だけだけど、全部通してできるようになりました」
「そうか──そうだな」
その少しずつの経験がもたらした、わずかばかりでも自信を帯びた声に、日嗣もまたその表情を和らげる。
「猿彦もお前を心配していた。……あれの妻は、芸能の神だからな。その加護も、きっとあろう」
「……猿彦さんが」
「お前も……よく力を尽くしている」
「……」
神依はその日嗣の雰囲気に、初めて会った時のことを……また仮宿で、猿彦と話をした時のことを思い出す。
 ……この神様は人前で、素直な自分を出すことが苦手な人なのかもしれない。
 形は違えど、今の自分と少し似ているような気がした。
 「──御霊祭が上手くいったら、何か褒美をやる」
「えっ……?」
そして一心に自身を見上げてくる巫女の、こそばゆい眼差しから逃れるように日嗣がそれを告げれば、神依はみるみる目を丸くした。
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