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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
「物なら大抵はやれるが──何か考えておけ」
「うそ……、どうしよう。──本当に?」
「ああ……、本当に」
嬉し過ぎて思い付かない、とはにかむ神依に、日嗣もまたどこか安心した心地になる。そんな些細なことで気が晴れるなら──来て良かった。
 「……では、一度舞ってみろ」
「……えっ!?」
「できるようになったのだろう、直に確認してやる」
「で……でも」
「早くしろ」
照れ隠しのように殊更に不遜に宣い、神依の腕に巻き付いていた子龍を摘まんで上座に座せば、神依はあからさまに許しを乞うような顔をして頭を横に振った。
 けれど子龍も取られてしまったし、相手もそう簡単には逃がしてくれないような雰囲気を醸している。
 「……」
それで神依は仕方なく、渋々と観念し、今日も家で練習しようと飴の包みの隣にある神楽鈴を取りに向かった。
 それを持って立ち上がれば、僅かな空気の流れに五色の細長い絹が揺らぎ、裳裾をくすぐる。
「……」
 鈴を手にした神依は気持ちが切り替わったように真剣な顔をしていて、それでも不安げに「まだ上手くないけど」と前置きをしてから、ゆっくりと神楽殿の中央に進んだ。
 楽は無い。一直線に向き合う二人は視線を交わし、互いの空気を頼りに初音を窺う。
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