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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
「……神依」
「っ……」
いつもと違う……酔ったような声音で名を呼ばれ、神依はようやく日嗣を見上げる。
 日嗣は──柔らかく、そして艶めかしく笑み、神依を見下ろしていた。召し出された時ともまた異なる、その熟れた黄金の瞳と視線を交わせば……あれほど性急に衣を乱した手が優しく神依の頬を抱く。そして、先程とは違う……まるで愛する者にするような深い口付けを落とされた。
 唇が離れれば、先程指を結んだ蜘蛛の糸のように細い、一筋の水が二人を繋ぐ。
「日嗣様……」
「……忘れたか。お前には、既に私の朱印が刻まれている。お前はもう……私のものだ」
「……っ!!」
言葉と共に、日嗣の唇が肌を伝い右肩で止まる。そこに甘く舌が這わされ、神依は思わず息を呑んだ。瞬き背筋を走る、異様な快感。
 日嗣の手はもう憚はばかることなく神依の体を撫で、裳裾をたくし上げていく。そのまま悪戯を施すように背の谷をなぞったり、手のひらで包み込むように腹をくすぐったり……落ち着きなく、けれども余すことなくその肌のなめらかさを味わい、未だ残る、少女の青い意識を少しずつ少しずつ取り崩していく。
 そしてついに指先が下着の縁に掛かった瞬間──
(……っ)
神依の脳裏に、その酩酊にはひどく不似合いで現実的な、ある事実が過った。
 それは理性を呼び戻すのに充分過ぎるほど充分なもので、神依は色に染まった頭を一気に白く凍てつかせると、
「だ──駄目……やめて!!」
吐き出すような拒絶の言葉と共に、思い切り男神を突き飛ばした。
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