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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
 ──やはり目の前の男は神で、自分は淡島の巫女だったのだ。
 そのどちらもが、人の形をしながら人とは異なる。その魂は互いに互いを呼び醒まし、共鳴し、捧げる者と捧げられる者として、内に秘めていたものを暴いてしまった。興してしまった。
 「ご……ごめんなさい……」
「……いや。俺の方こそ……悪かった」
「平気……です。ごめんなさい……」
互いに気まずそうに頬を染め、何を謝っているのか分からないまま謝罪して……神依はようやく固まっていた体を動かす。肌に咲いた赤い花を隠すよう布を引き寄せ、裳裾を足首の方まで流す。
「あ……」
 その時、物影に隠れ窺うようにこちらを見ていた子龍と目が合い……神依はますますに顔を赤くした。
 そして、何事かと振り返った日嗣もまた、何も言わずそっぽを向いた。


【6】

 屋根を叩く雨の音、葉に落ちる雫の気配。
 二人は薄暗くなってきた神楽殿の壁に寄りかかり、並んで座っていた。
「結局……俺は、神として餓えているのだと思う……」
ぽつぽつと、雨露のように語られる言葉に神依は静かに耳を傾ける。
「よく、鋭い葉のようだと言われる」
「偉い……神様なのに?」
「……だからこそ、なのだろうな」
「……」
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