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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 考えてしまうと涙が滲んできて、ばれないようにそっと袖で目を抑える。何だか最近涙脆くなってしまった。けれど禊もまた、何も言わず化粧を直してくれる。
 「……いよいよだね」
やがて神依は鏡の中に見慣れない自分の姿を映すと、深呼吸をして改めて儀式に臨む心構えを正した。
 いつもの簡素な巫女服ではなく、純白の薄衣を何枚も折り重ねた羽のような衣装。青々とした榊が編み込まれた襷に、いつもの倍以上の玉飾りと、洞主と日嗣しか使っているのを見たことがない金の装飾まで与えられた。
 しかしそんな主に反し、禊は静かに溜め息を吐く。
「……ですがやはりまだ少し、見栄えが致しませんね」
「……でも、これでも少しは長くなったんだよ」
鏡の中で視線を交わし、禊が今も気にして手直しする髪の感触に唇を尖らせる神依。
 何度とかしても髪が伸びる訳ではないが、神依の髪は他の巫女達と比べてまだ短かった。どうしても飾りの方が大仰に見えてしまうのだが、こればかりは時が経つのを待つしかない。
「もしかして、そんな気になるくらい変?」
「いえ。それでも……貴女様におかれましては初めての、しかも公での神事です。最高の形にして、御披露目して差し上げたかったのですが……」
「ん……」
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