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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 傘は与えられず、巫女達は水霊を興すに相応しいというこの空気に身を委ねた。
 そうして大社の前の道を抜ければ、先程とは随分と様変わりした広場が神依の眼前に現れる。
 神依はそれを見回し、知らず知らず長く息を吐いた。
 ただ一本、花を供える露台の社を境に注連縄が張られ、それを隔てた世界はまるで別物。
 縄の向こうは日嗣が催す祭祀を見ようと集まってきた者で溢れ賑やかに、そして縄のこちら……池のある方は、ただ水を帯びた空気と静寂とが支配する、水底のような空間となっていた。
 そして池の上には、白い紙の飾り──紙垂(しで)が提がる真新しい注連縄が張られ、祠が備えられ……そこが今日から神の宿る神聖な空間になることを示している。
 (……)
神依はそれを横目に、楽人達の舞台となる雨避けのある座舞台の方へと向かった。そこには楽器が運び込まれ、神楽鈴もそちらに準備されている。
「……」
繻子に包まれた桐箱を係の覡が広げてくれて、神依はそこにある鈴を丁寧に持ち上げた。形は同じだが、練習用の物とは異なる古い趣のある神楽鈴。鈴も布もなるべく雨に晒さないよう胸元に抱けば、深い音が一度しゃらりと鳴った。
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