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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 御霊祭はまだ始まらない。というより──本当は神依が準備を始める前、夜の内からそれは始まっており、一つ一つをこなしながら徐々に高天原を降り最終的にここに辿り着くのだという。
 (……日嗣様、大変だろうな。無理……はしてないと思うけど、気苦労はしてそう……)
禊達はこちらに来れないので、話し相手も無く、そんなことを考えながら手持ちぶさたに池の方を眺める。
 ……水際に備えられた祠の前には、神と成る前の蛟の骸を安置する台座が設けられていた。
 そして神依ら舞巫女達が立つ石畳を挟み、その正面に……この広場で人が立てるどの場所より高く、日嗣が立つ輿のような台(うてな)が組まれている。
 名も無き水霊と天津神を結び、更に淡島の“人”として彼らに仕える……巫女という存在。神たる日嗣の魂が複数の性質を宿すなら、人の姿のまま神になることができるという巫女もまた、その魂に複数の性質を宿している。
 「………」
……不思議と、緊張は無かった。
 ただあの朱の楼閣を見上げれば……人の姿は見えないのに、何か威圧感のようなものに襲われる心地がした。
 確かにあそこには神依の知らない何かがいて、自分達を見下ろしている。
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