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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 と、その時──
「……!」
その一点から空間がさあっと変わり、波紋のように静寂が広がるのが肌に伝わってきた。
 それが何であるのか理解した神依は、洞主が控える座間の方を見遣る。
 洞主もまた神依に分かるように頷き、それを促した。楽人達も散るように、舞台に調えられた己の扱う楽器の前に着き始めていた。
 時報も合図も進行も何も無い。全てはただ、その場に在る者達の空気と拍と眼差しだけで進んでいく。
 それは厳かという言葉とも違う。まるでそこに在る者達の存在を全て混ぜて圧縮して、同一にして、無にしてしまうような感じ。
 しんと静まり返った広場に響く川の音。それに混じり、微かに鳴り物の音がしたような気がした。
 それを機に、二人の舞巫女らが無言で池の方へ向かいその傍らに控える。神依も慌ててそれを追い、頭を下げた。
「あの……、よろしくお願いします」
「……」
「……」
だが二人は何も答えず、神依の代わりに外された舞巫女や、楽、詞を司る巫女達とちらりと視線を交わして、ただ密やかに笑うだけだった。
 「……」
この期に及んで、まだ仲間として認められないことが悲しかったが……ここに至っては、もうそれを嘆く時間も修正する猶予も無い。
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