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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 神依は再び巫女達と言葉を交わすこともなく……やがて、一度はっきりと鈴の音が聞こえると、広場に集まった淡島の誰もがその天津神を迎えるために静かに道を空け立礼し、また洞主や舞台の巫女達は額を床に擦り付けた。
(……!)
そうして全ての人の頭(こうべ)が黒を描く中──神依はただ一人顔を上げて、その祭列を見ていた。


【2】

 それは……意図したものではなかった。
 ただ先程、他の巫女に遅れたように遅れて頭を垂れようとしたその間際、その神々の姿が視界に入り──入った瞬間から、まるで雷に撃たれたように体の芯が麻痺して、動けなくなってしまったのだ。
 朝靄の中、淡島に降ってきた神々はただただ──美しかった。
 猿彦を先導に現れた日嗣はその装い全てを純白に変え、まるで銀花の上を滑る光の如く、その存在感を更に高潔なものにしていた。
 着飾らされた自分とは逆に一切の装飾を取り去り、手にした大麻(おおぬさ)もまた白木に純白の紙垂、霧のような雨を帯びた漆黒の髪だけが色。傍らの斎人が預かるのはあの剣だろうか──それすら白絹に包まれ、また先を歩む猿彦も、日嗣と同じように全身──あの鬣さえも雪獅子を思わせる──を真白の装いに変えていた。
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