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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 それどころか猿彦に添う稚児や神楽鈴を預かる伶人、列中の巫覡(ふげき)はもちろん狼藉を防ぐための舎人まで……皆一様に白い衣を纏い、対(つい)の者は衣の靡かせ方まで寸分の違いも無くその所作を対称にこなし、一人の者は故にこそ、極め尽くされた隙の無い所作で歩みを進める。
 それは規則的というより機械的で、人染みた味が無い分、より存在を潔白にしており……神依は自身が与えられた飾りでさえ紛い物のような気がして、恥ずかしくなった。霧でさえその御前に在るのを控え自らを分かち、道を譲る。
 (なんて……神々しい)
それを自ずと感じて全身が寒気にざわつき、そしてそれが畏怖であることに気付いた神依は指一本動かせなくなった。
 一方蛟を収めた小さな輿は列の中程にあり、人目に晒されぬよう左右に白い幕が掲げられていた。それがちょうど露台の社を過ぎる頃、猿彦と共に先導を果たす稚児と若き伶人が神依の前にやってくる。
 男の子とも女の子ともいえない二人の子らは、行く先を浄めるように榊の葉で水をすくい、その雫を足元に払っていた。そして通り過ぎる間際、顔を隠すように被っていた白い紗の向こうで神依に笑いかける。続く伶人もまた、その整った顔に薄い笑みを浮かべ神依を流し見た。
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