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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
そのままコラ、と猿彦に唇だけで叱られ、そのいつもと変わらない雰囲気に緊張を解かれて慌てて頭を下げれば、先に過ぎた三人がクスクスッと密やかに笑い合う。
よほど間の抜けた顔をしていたのか、それでも無邪気なその声はどこか親愛めいたものを含んでいて、嫌なものではなかった。
そのまま列は池の前に集まり、神依らの目に入らぬままに何事かの神事が行われる。
一応洞主や禊からその間の行程も聞いてはいたが、それを隠すことはある種の神秘性を保ち、高天原と淡島の在り方の差を観衆に刻むためでもあるのだという。
輿の扉が開かれる音がし、聞いたことのない声で神詞が捧げられ、また誰かがそれを受ける。それが数回繰り返されると、聞き慣れた洞主の声で聞き慣れない詞が述べられ、またそれを……聞いたことのある奥社の巫女の声が受け、終わる。
そうしてそれは天上の祭祀から淡島の祭祀へと引き継がれ、役目を終えた者らは再び祭列を組み直し朱の楼閣へと動き出す。
それからしばらく……その気配が消えたのを確認した、朱の楼閣近くに在った観客の方からそよ風のように人の気配が戻り、左右の巫女が顔を上げるのを感じて、神依もまた顔を上げた。
よほど間の抜けた顔をしていたのか、それでも無邪気なその声はどこか親愛めいたものを含んでいて、嫌なものではなかった。
そのまま列は池の前に集まり、神依らの目に入らぬままに何事かの神事が行われる。
一応洞主や禊からその間の行程も聞いてはいたが、それを隠すことはある種の神秘性を保ち、高天原と淡島の在り方の差を観衆に刻むためでもあるのだという。
輿の扉が開かれる音がし、聞いたことのない声で神詞が捧げられ、また誰かがそれを受ける。それが数回繰り返されると、聞き慣れた洞主の声で聞き慣れない詞が述べられ、またそれを……聞いたことのある奥社の巫女の声が受け、終わる。
そうしてそれは天上の祭祀から淡島の祭祀へと引き継がれ、役目を終えた者らは再び祭列を組み直し朱の楼閣へと動き出す。
それからしばらく……その気配が消えたのを確認した、朱の楼閣近くに在った観客の方からそよ風のように人の気配が戻り、左右の巫女が顔を上げるのを感じて、神依もまた顔を上げた。