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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 練習した時のように姿勢を正し、鈴と五色布を構え、歩き、背に二人の巫女らを従えゆっくりと日嗣の正面に歩み出る。
 そして神依は日嗣に、左右の舞巫女は蛟に一礼し、それが終わったら入れ違いに神依は蛟に、二人は日嗣へと礼を取り、また入れ違いに元の位置に戻る。それはまるで、歩でまじないを描くように。
 一目見た蛟は、あの時……まだ神依が神依でなかった頃に見たときのまま、白い紙で丁寧に包まれ、日嗣の玉の緒で結ばれていた。
 「……」
「……」
日嗣と視線を交わせば、その目が心に問うてくる。だから神依もその眼差しに心を乗せ、見つめ返した。
 想うは、黒い柱石の煌めきを宿す瞳と白い花の藻。
 あの小さな龍は……楽しみだと言っていた。それを支えに今日まで後悔と懺悔の念をその魂に宿してきたのなら、その心の淀みを──穢れを祓える者は、自分しかいない。
 そしてその魂を最も美しく、最も気高く、最も優しく満たすことができたなら……末は、天津神たるあなたに託します、……と。
 神依は目を閉じ、再び頭を垂れる。
 それに今度は観衆も倣い、また日嗣もそれを請けると、その薄い唇に微かな笑みを湛え大麻を静かに翳した。
 それは風に靡く垂れ桜のようにさざめく音を立て──
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