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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
「──集わり侍る祝部達、百の人等、諸聞き食えよと宣り給う──」
伸びやかに澄んだ、日嗣の謳う声と共に、舞った。
 「……」
それは原初の男神女神を讃え、世の成り立ちを語り、神々の生まれを語り、栄える人の世を語り、そこに出ずる罪や穢れを祓ってくれることを乞う詞だった。
 神を生む前の、最後の祓の儀式。
 神依はそれを聞きながら、目を閉じた先の暗闇に浸る。
 男神の声は玉水となって心の水面に落ち、波紋を起こしては水上の芥を端へ端へと追いやっていくようだった。
 「……、」
……そしてそれはふと、あの日の神楽殿を思い起こさせる。
 一心に舞ったあの日……静寂と雨、鈴の音。
 残ったものは、その時の空気の感触だけだった。……あれでいい。あれがいいのだと……最後に日嗣が教えてくれた気がした。
 ……そしてその詞が消えるのと同時に、皆再び面を上げる。
 目を開いた神依は、日嗣ともう一度だけ視線を交わした。
「……」
「……」
言葉無きその優しい励ましは、長い月日の先にある、穏やかな実りの色。
 (……大丈夫)
神依はそれに応えて自然と舞う姿勢を作り……それを感じた二人の舞巫女も、同じように構える。そして楽人もそれを見て、互いの空気を読み合った。
 やがて──音が鳴る。
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