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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
***

 「……え?」
しかし音が鳴った瞬間、神依は一気に現実に引き戻されて顔を上げた。
 そして自身に何が起きたか分からず、その場に固まった。
 また、台の上に居た日嗣も同じように目を見開いた。
 何が起きたか──困惑する神依に反し、それを一瞬で悟った日嗣は愕然とする。
(まさか──)
──まさかよりによって、自身の司する祭祀でこんなことを仕出かすとは。そこまで淡島の巫女達は──と、憤りを通り越して酷い締感に襲われた。
 くすくすと笑む声が四方から聞こえる。神依にも聞こえるだろう。声ではない、眼差しや空気に乗せられる悪意は、本人達が思う以上に“分かる”のだ。
 まるで邪魔だと言わんばかりに、二人の舞巫女が左右から神依を追い立てるようにその舞を美しくこなし、振られた袖が動けないままの神依にぱさ、ぱさと触れる。
 その度に少女の何かがぽろぽろと崩れていくような気がして、日嗣はぐっと奥歯を噛みしめた。
 ──あの──神楽殿での時間は、何だったのだろう。
 全てが、“始めから違っていた”のだ。

***

 そして、日嗣以外にもそれを正しく理解していた者がいた。
 禊だった。
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