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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 神依以前にも数人の巫女に仕え一の位を得て、また毎晩遅くまで神依の稽古に付き合っていた禊だからこそ分かったこと。だが──
(──そんな)
そんなことがあるはずがない。しかし、それは目の前で現実に起きている。
 「なあ……なあ、一ノ兄。神依様──なんで」
「……っ」
「一ノ兄──」
傍らの童に袖を引かれ、我に返った禊は乱雑に人をかき分け洞主の元へ走る。
 しかし結界となる注連縄を越えようとしたところで、それを見越していたように大兄によって横の茂みに引きずり出され、地に押さえ付けられた。
「──抑えろ……抑えろ、大弟」
「大兄──離せ、俺は洞主様に──!」
「静かにしろ! ……こんなざまでも、今は祭祀のただ中だ。御令孫の御前だぞ……御令孫の司する祭祀だぞ。これ以上……神々に無様を晒すな。お前は人ではない──“禊”だろう」
「……ッ!!」
苦虫を噛み潰したような顔でそう唸る大兄に、禊は怒りも露に、しかし多少の分別は取り戻したかのように口を閉じ土を握りしめる。
 普段感情を露にしない弟分のその姿に、大兄は怒りの度合いを悟って苦々しくその表情を変え、腕の力を緩めた。
「……失敗すれば、玉衣様かてどうなるか分からぬ……」
「大兄……」
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