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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
「分かるだろう……これは、お前の主だけに向けられた悪意ではない。これは彼女を取り立て、庇い、見守り、助けてきた者全てに対しての悪意の結晶だ。俺達が取り乱せば、ますます“彼女達”の思惑通りになってしまう」
「俺は……俺はそれでもいい……、だが神依様はどうなる。神依様は今、お一人であの場にお立ちになっているんだぞ……! その悪意を全て一人で背負われているんだぞ……!! 大兄、あんたなら分かるだろう、彼女は……神依様は、あの場にある誰よりも正しく、巫女であったのに……なのに……!!」
「……すまん。……すまん、大弟。あと俺と玉衣様にできるのは……あの水霊が無事になにがしかの神に成るよう祈ることと、御令孫と神々に頭を垂れこの非礼をひたすらに詫び、慈悲を乞うことだけだ」
「大兄……っ!!」
「……俺は玉衣様の元に戻る。あの方かて……そうして、今まで一人で立っていらしたのだ」
 餓えた獣のように歯を剥き出し悲憤に唸るかつての弟分に、大兄は言い含めるようにその肩に手を置き立ち上がる。
 入れ違いに、ようやく人の隙間を抜けてきた童が禊に走り寄った。
「一ノ兄」
「……」
事態がどれほど重いか、今にも泣きそうな童の声がそれを改めて禊に報せる。
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