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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 立ち上がり、引きずり込まれた茂みから抜ければ風のように、厭な囁きがさわさわと広場を満たしているのが分かった。皆好き好きに、剃刀のように小さな言葉の刃をある一点に向けて飛ばしている。
 「……」
しかし禊の脳裏に過ったのは、どこまでもどこまでも……ただひたすらに無責任で、優しい言葉。

──……私、頑張るね。禊の気持ちが無駄にならないように……一番下手かもしれないけど、一番カッコ悪いかもしれないけど、でも今までで一番綺麗に舞うから
──見てて

 「──……」
「一ノ兄……」
その未熟さと門外漢であるが故に何が起きているのか分からず、ただすがるように自身を呼ぶばかりの弟分に、禊は悲痛に満ちた声で呟いた。
「……一ノ弟。お前は家に戻れ。戻って、湯でも布団でも、神依様が心安らぐあらゆるものの準備をしておけ」
「え……」
しかし童はその意味が分からず、ただこの場から追い出されるだけのような──そんな気がして、頭を横に振る。
「や……やだよ……。一体何なんだよ、姉ちゃん──どうして。姉ちゃん、あんなに頑張って練習してたのに……なんで──なんで“舞わない”んだよ。何か、あったんじゃ──」
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