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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 観客達は誰かが動く方に這いずり、或いは崩れていく地から逃げようと人を押し退けて、我先にと朱の楼閣へと向かい助けを求めてその門を叩いた。
 しかし殴るような雨風が彼らに叩き付けられ、端から折り重なるように倒れていく。或いは崩れていく大地に足を取られ、悲鳴だけを残して雲海へとその姿を消していく。
 阿鼻叫喚の図。
 「──ち…ッ」
その中で真っ先に動いたのは、猿彦だった。
「これは一体──。さ、猿彦様──」
「うるせえ、下がってろ!! ──行け、お前達!! 絶対に一人も取りこぼすな!!」
猿彦は理性を取り戻し始めた洞主を押しやり、羽扇を取ると自らを境に結界を張り直す。道俣(ちまた)の神であり、境を見守る猿彦の神威。続けて稚児と伶人達に指図すれば、稚児らはその可愛らしい、或いは麗しい姿を巨きな蛙の姿に反転させ──主命に従い落ちた人々を救うべく、一直線に雲海へと向かい大きく跳ねた。
 「──孫!」
「彦──」
それを見送るのと同時に宙を蹴り日嗣の隣に浮かべば、日嗣は我に返ったように人々が集まる朱の楼閣を見遣る。
 猿彦の結界のおかげで身動きができる程度にはましになっているが、なおも嵐は収まらない。
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