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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 荒ぶる乾坤は高天原まで影響を及ぼしているだろうが、神々の加護が濃い分被害は軽いはずだ。神域に護られると認識すれば多少なりとも人心は落ち着くだろう。
 ……たった一人の少女に、こぞって悪意を向けた人々。それでも……だからこそ。
 見捨てる訳にはいかない。
「……開門せよ!! 天つ皇御孫(すめみま)の勅令であるぞ!!」
日嗣はなりふり構わず、人が逆らえ得ない絶対的な言葉を選びそう叫ぶ。その声と言葉に、残った陸地や倒れた木々にすがる人々はほのかな希望と安堵感を持って朱の楼閣を見上げる。
 だが……しかし、門は一向に開く気配を見せなかった。そしてそれを悟った日嗣もまた、顔を歪めた。
「お祖母様……!」
あの言葉選びでなされた命を差し止めることができるのは高天原でも僅かばかりの神のみ。その僅かばかりの天津神は、人命よりも神たる矜持とそれ故の神性を選んだのだ。
 「ッ……」
それは日嗣にも理解はできる。やはり人が踏み込んではならない領域というものがこの世には確かに存在するのだ。だがこれでは──神も人もどちらも同じくらい醜く、同じくらいやるせない。
「孫……仕方ねえ。何事にも一線はある。こっちだけで何とかするぞ」
「……すまない」
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