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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
***

 「……っ、……く、うぅ」
……気付いた時には神依は一人、あの花畑の、清らかな水の中に居た。
 自分の体なのに、何だか酷く存在感が頼りない。意識だけここにあるような……夢を見ているような心地で、だけどこれが夢ならどれだけ良かっただろうと思う。
 そして思えば自然と涙が溢れてきて、神依はまた一人嗚咽し、その溢れる涙を拭った。
 悲しい。恥ずかしい。苦しい。切ない。寒い。冷たい。寂しい。消えたい。
 ──ごめんなさい、と。
 心の中でそれが渦を巻き、涙になって溢れてくる。
 優しくしてくれたみんなに申し訳なくて、情けなくて、悲しくて、どうしたらいいか分からなかった。
 ──神依……!!
誰かの声が遠くで聞こえる。でももう、応えられない。
 『……神依』
そこにあの、優しい女性の声が重なって──神依は一瞬肩を震わせると、涙を拭うことも忘れてその泣き顔を上げた。
「……お母さん、……どこ……?」
無意識の内にそう呟き、周囲を見回す。しかしあの大きな水晶にも姿は無く、代わりに温かい風が神依を包んだ。雨で冷えていた体に伝わる優しい熱。お日様のようだった。
「女神様……」
『……』
形無き手が瞼を、頬をなぞる。涙が空気に浮かんで、川の中に落ちる。
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