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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 その先は砂ではなく、神楽鈴が落ちた石畳がぼやけて見えた。
「…………」
『……まだ、終わっていないでしょう? 神依』
「……でも、もうできない」
『どうして? ……あそこには、あなたを必要としている人がいるのに。……あの声が、聞こえない?』
「……」
 うつむく神依の耳に、自分の名を呼ぶ男の声が聞こえてくる。
 ……神依。
何故か今まで、彼にはあまり呼んでもらえなかった名。それが聞いたこともない程に切迫した、喉を裂くような声で紡がれていく。何度も……何度も。
「……日嗣様」
『そう……分かるでしょう?』
「……」
しかし、神依はうつむいたまま……やがて力無く、髪が揺れる程度に頭を横に振った。
 「……日嗣様には私じゃない……私じゃなくてもいい。ううん……やっぱり、私じゃない方が良かったの……」
伏せられた瞼に再びじわりと涙が浮かび、睫毛をくすぐる。
 「結局……みんなが言っていた通り思い上がりだったの。私より綺麗な人も、舞が上手い人も、巫女として経験を重ねてきた人もたくさんいた。何も無い私はただ、みんなを信じて託せば良かった。それが軽薄であっても怠惰であっても……でもそれが今更、何だって言うの」
『神依……』
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