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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 その形無きものの、子を慈しむような仕草と諭すような言葉に、意思とはうらはらに涙はますます雫を増やしていく。
 今まで我慢して、縮こまって軋んでいた心には、それはあまりに優しくて……残酷な愛撫だった。
 それは神依の心に密かに息づいていた淡いつぼみをますますにほころばせては、真実を促し凍えさせる。
 腫れぼったくなった瞼を拭えば、もう何度も擦り過ぎて痛みさえ覚えた。
 けれど……けれども今はそれより胸の奥底の方が痛くて、どうにもできない。頭は一生懸命気休めの言葉を紡いでくれるが、それも全部、締め付けられるような痛みに変わっていく。こんなのは嫌なのに──嫌なのに、きっともう、消えてはくれない。
 「う……っ、っく……」
『……神依』
「……だって……、だって」
そして神依は吐き出すように、ついに、それを口にした。
「……それなら私は、……巫女としてだって、本当は必要じゃなかったんだもん。……私が、巫女だったから……だから日嗣様は、神様として私を求めてくれた。でも、それすら本当は必要無いものだったら、私は……私は、日嗣様には本当に、必要無いじゃない。だって」
『……』
「だって日嗣様には……妻神様がいらっしゃる。私なんか……いらない。……いらないんだもの……」
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