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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 その自ら発した言葉は意識の奥底に根付き、毒を吸い上げつきつきと神依の心を痛め付ける。
 ……変わらない。
 結局は自分も、彼女達と何一つ変わらなかった。同じだった。あの美しい男神に惑い、惹かれ、手を伸ばそうとする淡島の巫女の一人。
 ただ外から注がれたたくさんの清廉な水が、底の穢いものを冷たく美しい水面で隠してくれていただけ──。
 「……っ?」
そこまで思ったとき、それをかき消すようにざあ、と梢や草花が揺らいだ。
 ……花の風はもはや慰めの言葉を吐いてはくれなかった。
 ただその代わりに淡い色の花弁が神依の回りを螺旋に廻り、甘みを帯びた薫風が狂おしそうにその冷えた体を抱く。
『……いらない、なんて言わないで。あなた達はみんな私の大事な子。いらない子なんて、どの世界にもいない』
「女神様」
『そして……あなたが私と同じ、女であることを恐れないで。駄目でもいい……そう、怖がらなくていいの。それは例え……痛みを帯びたとしても、とてもとても幸せなことだから』
「……だけど……だけどもう、私は……」
『……お願いよ、神依。寄り添う相手に背を向けられる寂しさは、神にも人にも耐え難いもの。……分かって。あの子も今、ひとりぼっちなの……』
「──……」
 ……日嗣様が?
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