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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 そう頭の中で問いかければ、いつかと同じように……ぽちゃん、とひとしずくの水が落ちる音が頭と耳の芯に反響する。
「待って──女神様──」
『……大丈夫、あなたはまだあの子と繋がっている。それは見た目には、細い細い蜘蛛の糸のようだけれど。──蜘蛛の糸は、水には決して裁ち切れない』
「あ……っ」
そしてその言葉と共に、神依の意識は再び海の中に落ちた。


【4】

 「……」
その、海の中で神依が視たもの。視てきたものは全て……記憶だった。
 命を落とした原初の女神はやがて地に還り、この世界のあらゆる命の息吹となって、またその命が織り成すたくさんの物語を眺めていた。見守っていた。その記憶。
 神依はその名ゆえに女神と……世界と同化し、その記憶の欠片を辿っていく。

 ……地の底から戻った原初の男神は根の国に降りたことを悔い、穢れた体を清らかな水で禊いだ。
 そしてその時に、男神の体から男神自ら褒め称えるような美しく威々しい、三柱の神が生まれた。それを三貴子と呼ぶ。
 男神は一番上の女神に日と高天原を、次に生まれた男神に月と夜の国を、そして最後に生まれた男神に海原を与え、治めるよう宣(の)り給うた。
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