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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 しかし最後に生まれた男神だけは父神に従わず、母神を恋しみ、父神に逐われながら根の国へと降りた。

 ……それは日嗣の、血族の物語だった。
 やがて高天原の神々は豊葦原の神々を降し、その地を治め神と人との頂点に君臨し、統べるに相応しきある一人の神を選定した。
 それは生まれながらに美しく気高く……葉のように、剣のように鋭い、若き男神。
 原初の男神の流れを汲む日の女神、天照の寵愛深き、天孫……日嗣だった。
(……)
 天照は日嗣のためにあらゆるものを調え、与えた。数多の神を遣わせ、美しい御物(ぎょぶつ)を纏わせ、自身の宝物を惜しみなく譲り──あの日嗣を飾る、不思議な音を奏でる首飾りや綺麗な装飾がされた剣は、全て世に二つと無い宝。天照からその一の地位を許された、証だったのだ。
 そうして日嗣は高天原より天降り、この八衢にて一柱の異形の神とまみえた。
 天照はその異形の神を恐れ、一柱の強く美しい女神を遣わせる。
 そしてその女神は異形の神と差し向かいになっても恐れず、主に従いその正体を問うた。
──我らが天津神の御子が天降る道に在るのは、誰ぞ。
 異形の神は答える。
──俺は国津神、衢神(ちまたのかみ)だ。天より神の御子がお降りになると聞き、御前(みさき)に仕え先を示そうと、お迎えに参った。……ところでお前、肝が据わったいい女だな。……俺が怖くないのか?
──……は?
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