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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
 (……猿彦さん)
それは神依もよく知る道の神……猿彦と、その妻神を物語る記憶の欠片。
 日嗣は異形の神を顕した女神とその神自身を結ばせ、夫婦となした。
 そして自身は、豊葦原の中でも朝日射し夕日照る日向国……その霊異(くし)ぶる霊峰、高千穂の峯に、降臨した。

***

 日嗣は始祖が国生みに用いた矛をそこに突き立て、また同じように壮大な御殿(みあらか)を造り住まいとした。
 そしてある日、その陸のある御埼で見目麗しい……一人の乙女に、出会った。
 (……日嗣様)
──見たくない。聞きたくない。
 神依は拒絶するように、子供が駄々をこねるように頭を横に振る。
 しかし過去の記憶は残酷に、ふさいだ耳をすり抜けて神依に語り、閉じた瞼を透かして神依の意識に淡々とそれを記す。
 『──お前は、何処の娘だ』
『……私は大山津見神(オオヤマツミノカミ)の娘、阿多つ隼人の姫であり、名を……木花之佐久夜(コノハナノサクヤ)と申します』
 二人が神依の姿を認めることは無い。
 ただ二人は、二人だけの時間と空間の中で言葉を交わす。
 (ああ……)
──あの黄金(こがね)の瞳に映された女性は、一体どんな女性だったのだろう?
──あの凜とした声が囁く甘い言葉は、その女性をどれだけ虜にしたのだろう?
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